飛ッ石~Hisseki

日常から生まれた筆跡を、飛び石のように置いて歩いていきます。目的地は不明。

最近読んだ本①

最近読んだ本の感想を書こうと思う。

 
1.『教団X』中村文則

教団X

 今までにそんなにたくさんの本を読んできたわけではないけど、その中でベスト5には入る。
 
ずっと気になっていたけど、近くの本屋では売れ切れが続いていた。そして先日、その本屋で予想以上に分厚い『教団X』が私を迎えてくれた。
 
500ページ以上ある長い物語ではあるけど、文体も好みでスラスラと読んでいけた。内容も面白い。人間の内面に渦巻くものと、その集合体としての社会に渦巻くもの。それが幾重にも重なり合ってストーリーは展開する。
 
私は、単なるフィクションも嫌いではない。でも、世界情勢や歴史、経済、科学、学術的な理論などに裏打ちされている物語はやっぱり圧倒的に魅力的だ。
 
村上龍の『五分後の世界』や、『愛と幻想のファシズム』にも、同じような魅力があって大好きだ。
 
『教団X』には、原子・意識・脳・生物・宇宙・神・宗教・戦争・欲望・善悪・トラウマ・解放などなど、ミクロからマクロまで様々な要素があるけど、すべてが無駄なく緩やかに結合していて、奥が深い。さらに、今の日本の水面下で起きているなにやら不穏な動きを少しだけ紐解くような、タイムリーなテーマも入っている。とにかくこれは今の本。今読むべきだと思う。

 

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

映画化もされ話題になっており、「ただの恋愛小説ではない」ということはもともと耳に入っていたが、なるべく先入観なしに読んだつもりだった。

 
でも、やっぱりその仕掛けを探ってしまうというか、変な推理を働かせながら本を読み進めることになってしまった。結果的にまんまと作者の罠にハマることはできたけど、事前情報が皆無だったら、より感動は大きかったと思う。
 
「すぐに読み返したくなる本」という謳い文句もあったけど、そこまではいかなかった。一度で満足。いつかまた読むことはあるかもしれないけど、すぐではない。
 
内容的には、自分がちょうど大学に進学したころの恋愛経験と少し似ているところがあって共感した。
 
高校生のときには純朴でかわいらしい女の子と付き合っていたけど、大学に入ってからすぐに、少し派手めのお嬢様に心を奪われることになった。私にとっては、そのへんの時期が恋愛の通過儀礼(イニシエーション)だったのだと思う。
 
3.『2時間でおさらいできる世界史』祝田秀全

2時間でおさらいできる世界史 (だいわ文庫)

日本史を専攻していた私は、世界史についてあまり知らない。なので最低限の流れを知りたいと思ってこの本に手を伸ばした。それが間違いだった。
 
この本は、「本」としては最低のレベル。とにかく文体がひどい。本来分かりやすくチョイスされているはずの内容が、その書き方のせいでめちゃくちゃ分かりにくくなっている。読んでいてこんなにイライラする本は初めてだ。そのせいで途中で読むのを放棄した。
 
本の帯にはこう書かれている。
「子どもも大人も、受験生もビジネスマンも!これ一冊で流れがつかめる・・・」
 
は? という一言。どういうことかというと、この本では、すべてのセンテンスに、しつこいほどに著者のオヤジギャグレベルの戯言が混ざってくるのだ。しかも、ある世代(著者の世代)の人間にしか分からないギャグ。
 
この本の中からその一例を挙げましょう。
 
「主権国家とは国家の最高権力である主権が、それが、それぞれの国家にあるということ、そしてそれぞれがみな互いの統治領域を認め合う体制のことです。こんな、あたり前田のクラッカーのようなことが、当時は常識ではなかったんですね。」
 
お分かりいただけただろうか。
 
最初の方に出てくる「それが、」もいらなくね?と思うけど、まぁ許せます。でも、「あたり前田のクラッカー」のくだり、いらなくね?
 
しかもですよ、この文章で太字になっている言葉ってなんだと思いますか?
 
「あたり前田のクラッカー」ですよwwwww
 
せめて「主権国家」を太字にしろ!!!
 
こういうトラップが、数ページに一回出現する感じです。そのストレスはすごいもんです。ある意味で未知の体験でした。本当にひどいです。2時間で読める人もいないでしょう。
 
ただ、私にも反省すべき点があることに気づいた。それは、この本のタイトルだ。
 
「2時間で理解する」ではなくて、「2時間でおさらい」なんですよね。この本は、あくまでも世界史がある程度頭に入っている人がサラっと「おさらい」するための本なんだと。この点だけは理解できた。ちなみに、オヤジギャグみたいなのさえなければ、内容的には良いものであるはず。
 
4.『マッキンゼーのエリートはノートに何を書いているのか』大嶋祥誉

マッキンゼーのエリートはノートに何を書いているのか トップコンサルタントの考える技術・書く技術

その名の通り、マッキンゼーのエリートのノート術がテーマ。基本的には、コンサルティングにおける問題解決のためのノート術についてだが、これは他のことにも充分に転用・応用できる内容だった。
 
まず大前提として、何かの文章を書くことになったときや、資料を作成するとき、パソコンに文字を打ち込みながら考えていくのか、ノートに書いて頭を整理してから最終的なアウトプットを作成するのか、という違いがある。この、後者の方のメリットを説得力をもって提示してくれている。
 
まず、実際にペンを握って書くこと。この、手を動かすという行為が、脳みそに刺激を与える。それが思考を効果的に整理するのだ。これが非常に大事だと。
 
この本では、その大前提から、次に実践的に複数のノートを使い分けて最終的な成果、つまり人に内容を分かりやすく伝えるアウトプットの形を作り上げる方法を解説している。
 
これは、コンサルティング業に限らず、ライターにとってもかなり有効なテクニックだと思った。もっと言ってしまえば、例えばラッパーがリリックを書くときや、ブロガーがブログを書くときにも使えるはずだ。問題解決のためではないが、人に伝えるためという意味で。
 
 
 
 
 
最近、本を読むことが多くなった。意識的にそうしている部分もある。今、ライターとして勉強しているのはビジネスに関することが中心だけど、やっぱり今の日本や世界に対する知識を少しでも深めたいという気持ちがある。そこは必ずつながっているからだ。
 
さらに、今の日本や世界を知るためには、トレンドも歴史も知らなければいけない。今の自分は足りなすぎると痛感している。でも、知識よりも重要なのは、自分の考えだと思う。特に今の日本では、自分の考えを持っていないと簡単に流される。だから、現時点で自分の考えがまとまっていなくても、私はこのブログでそれを晒しながら、おもしろおかしく知識を吸収していきたいのだ。
 
 
 
 
PEACE‼︎